最新の情報(世界の医学論文)から判断しますと、小児の滲出性中耳炎は頻繁に通院して耳管通気をしたり、鼓膜切開をしてもほとんど治療効果はないとされています。このように耳管通気は世界的には治療効果がないとされ、諸外国ではほとんど行われておらず、日本独自の治療として残っているものです。しかし、伝統的な治療法で、治療効果があると根強く信じている医師も多く、現在でも我が国では一般的な治療法なのです。
ですから、耳管通気を必要のない治療法と主張すると、多くの耳鼻科医からは反発されるでしょう。結局、私は欧米の評価の高い論文の成果を信じた治療方針をとっており、我が国で通気治療をなさっている先生方は伝統的な治療を経験に基づいて行っておられるとしか言いようがないのです。
事実、私は小児の耳管通気は一切行わず、鼓膜の状態が悪化しないかどうか、聴力はどうかということを最初の数カ月は観察するだけです。これで、滲出性中耳炎の治癒率は従来の頻繁に受診し、通気を行うことと全く変わりません。面倒な通院が減るので、労力とお金の節約になります。
ですから、私からしますと、いいこと尽くめなのですが、世の中そう簡単にことが運ぶわけではありません。まわりの開業医がどこも耳管通気をするので、お母さん方にもこの治療法が半ば常識化しているのです。ですから、耳管通気をしないと逆に不信感をもたれることもめずらしいことではありません。「先生、耳管通気はしていただけないのですか」と尋ねられます。そこではあまり他院の治療をけなすことになっては問題ですので、「通気は必要ないと思いますけれど」と曖昧な返事にならざるを得ないのです。
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