真珠腫とは慢性中耳炎の一種なのですが、普通の中耳炎よりもやっかいな性質を持っています。周囲の骨をとかしながら炎症が拡がるのです。ですから真珠腫が進行すると、めまいがしたり、難聴がひどくなったり、髄膜炎といって脳をおおっている膜が炎症を起こし、命にかかわることさえあります。ときには顔面神経麻痺がおこることもあります。
炎症の拡がるスピードは人によっても違いますから、何年も病状が進行しない場合もありますが、バイ菌の炎症をきっかけに真珠腫の拡がるスピードが一気に速くなる場合もあります。やはり、早めに手術を受ける決断をしていただきたいものです。
なお、「この手術が必要かどうか」といったご質問を受けることがよくあります。真珠腫の場合、この病気を治したり、他の合併症を未然に防ぐためには、手術は必要です。但し、この手術があなたに必要かどうかはご自身でご判断頂くしかありません。
それは、結局は個人個人の価値観の問題だからです。この病気を治すためには手術が必要でも、手術を受けるくらいなら死んだ方がましという価値観をお持ちの方には必要ないと判断されてもしようがありません。
医療とはすべからくそういう性質を持っていますから、最終的な決断はもちろんのこと、必要かどうかの判断も患者さんご本人にゆだねられているのです。
例えば、風邪で耳鼻科を受診した場合、「風邪薬をお出ししておきますね」と私がいった場合、患者さんから「その薬は必要ですか」と訊かれると、「飲んだほうが早く楽になると思いますよ」としかいえません。必要とも不要とも言えません。例えば、頭痛の患者さんに「念のためCTを撮りましょう」といって、「その検査は絶対に必要なのですか」といわれれば、「絶対に必要というわけではない」つまり、「No」という答えになるのです。
また、例えば、早期胃癌と診断を受けて、手術を勧められたとして、「手術が必要ですか」と尋ねられれば、胃癌を高い確率で治すためにはなるべく早く手術をすることが望ましいというのが最も正確な答えです。医療行為の結果には絶対に不確実性が伴いますし、患者さんのあらゆる個人的事情が絡んできますから、必要かどうかをこのような場合も言い切ることは医師にはできません。
つまり、繰り返しになりますが、医療の現場ではどのようなシチュエーションでも、必要かどうかの判断を医療者側に託すのは不適当のように感じます。
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