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Yちゃんは5歳の女の子。先月はじめに突然右耳の痛みを訴えた。急性中耳炎は4・5日ですっかり治った。でも、その後聞こえにくいと訴えるようになり、母親も呼びかけに返事をしないことが気になるように。なんでも、滲出性中耳炎になったとのことで、ほぼ1ヶ月、かなりの回数、通院し、鼻の処置とガッコウ通気を続けている。
Yちゃんの母親 「先生、やっぱり水がたまってますか?」
C医師 「そうですねぇ、まだどうもたまっているみたいですねぇ。」
Yちゃんの母親 「あのぉ〜、水がたまっているかどうか、見るだけでははっきりしないんですか?他に水がたまっているかどうか検査とかでわかる方法はないんですか?」
C医師 「う〜ん、まあ、お母さん、そう焦らず、じっくり通院されてはどうですか。」
Yちゃんの母親 「先生、こうやって通院の治療を続けると、難聴とかにならずにきっちり治るんですか?」
C医師 「まあ、ねぇ。普通は徐々に治っていきますけどねぇ。」
Yちゃんの母親 「じゃあ、先生、だいたいどれくらいで治るんですか?」
C医師 「そりゃあ、個人差があるんでね。10才くらいまでにはほとんどの子は治っていくと思いますが。」
Yちゃんの母親 「ゲッ、じゃあ、あと5年もこんなふうに通院するんですか。」
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ダメだ、こりゃあ。冗談じゃない。いくらなんでも、子供の病気で本当にそんなに長くかかるの?それにあの先生、いうことがいつも曖昧で、自信なさそうな言い回しはすごく気になる。耳に水がたまってるかどうかもはっきりとわからないって、普通のことなのかしら。もしかしたら、とんでもない医者に見てもらってるとか。やっぱり一度別の耳鼻科にいってみよう。 |
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というわけで、D耳鼻科を受診。
Yちゃんの母親 「先生、最近ではあまり聞こえにくい感じはしないのですが、やっぱり水はたまっているんでしょうか?
D医師 「はい、鼓膜の奥に滲出液がたまってます。今から聴力検査と鼓膜の動き具合を見る検査をしますからね。」
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なんじゃ、そりゃあ。そんな検査があるなんて、聞いたことがないよ。 |
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検査は15分ほどで終了。Yちゃんも機嫌良く受けてくれた。
D医師 「やっぱり聴力はかなり悪くなっています。鼓膜の動きを見る検査でも両側の鼓膜はほとんど動いていません。お母さんが最近、お子さんの聞こえが悪いように感じないのは、悪い意味で、お子さんの聞こえにくさになれてしまったからです。しばらく鼻と耳の処置をしますので、しっかりと通院してください。
Yちゃんの母親 「先生、どれくらいの割合できたらよろしいですか?」
D医師 「今の状態でしたら、週に3回通ってください。鼓膜の状態が悪化するようなら通院を増やし、良くなってきたら、減らします。」
Yちゃんの母親 「どれくらいで治っていくもんでしょうか?」
D医師 「まずは3ヶ月、しっかり通院してください。それで8割は治ります。」
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しかし、それにしても、医者によってこうも違うものかしら。こちらの先生はきっちりと検査をしてくれたし、指示も的確で、私の質問にもはっきりと答えてくれる。 |
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C医師とD医師、好対照な二人ですね。この二人の医師、実際の違いは聴力検査をするかしないか程度で、診療に違いはほとんどないようです。しかし、この母親の受けた印象はずいぶん違ったようですね。それは言葉尻というか、語尾が大きく影響していると思います。
C医師は、会話の最後の「10才くらいまでにはほとんどの子は治っていく」という発言は私はよろしくないと思います。5歳の子の治療に通う母親にいう言葉としては、あまりに配慮に欠けた発言のように感じます。
しかし、それ以外の点で特に問題点は見受けられません。滲出性中耳炎で滲出液がたまっているかどうかわからないことは珍しいことではありません。私の診療でも日常茶飯事のことです。しかし、滲出液がたまっているかどうかわからない程度の鼓膜の状態なら、滲出液の有無をすぐに正確に見分ける必要もほとんどないのです。
C医師の他の発言で語尾が曖昧な表現になっているのは、この医師の性格などの影響もあるかもしれませんが、基本的にははっきりと断定できる事柄ではないからにすぎないと私は思います。まあ、D医師の方がずいぶんと歯切れがよく、かっこいいというか、患者さんからの信頼が得やすいとは思います。
しかし、週に3回通院するというのはD医師の治療方針なので、私がとやかく言う問題ではありませんが、このように根拠のないことを断定的に言うのは私は好きではありません。それでは週2回なら治らないのか。週5回通院したら通院期間を短くすることができるのか。自分の感覚的な治療方針にすぎないと私は思うのです。
もちろん、患者さんには通院の目安は伝えてあげないといけません。それなら断定的に3回といわず、週に2・3回とか週に3・4回程度とか、いうほうが正確というか、誠実な言い回しのように私は思うのですが、いかがでしょうか。
ちょっと話はそれるかもしれませんが、医学という人の体、つまり自然を相手にする事柄では、断定的なことはほとんどいえません。今回のストーリーではそのような点について感じていただけたらと思います。
お母さんのための『中耳炎物語』
ストーリー7
「頼りない医師」
終 |